第9回 意外なお見舞いヒット品


 
2005年6月。3週間という入院を楽しんでいた私。
1週目は怒濤のように過ぎ(手術前検査→手術→手術直後の痛み)、気持ちの余裕がでてきたのは2週間目に入ってからのことです。

お腹を切って縫っているので、体力がガクンと落ちています。シャンプーの許可が出たのも、手術後1週間目ぐらい。頭がかゆかったけど、洗うのをあきらめざるをえない、体力のなさ。

そんな中の娯楽は、人とのおしゃべり、ラジオ、読書。
読書といっても、集中力が長続きしないので、気楽なものしか取り組めません。検査で呼び出されたり、お見舞いにきてくれた友達としゃべったり、そうこうするうちに食事の時間が来るし。

私が入院した部屋で一番人気だったのは「長編マンガ」でした。病院の書棚にあったマンガ文庫「Swan−白鳥(有吉京子)」をまとめて借りてきたら、病室内に一大ブームが巻き起こったのです。「次、貸して〜」と学級文庫がぐるぐる巡回。

そういえば、これは、子どもの頃に読んだ記憶がある作品。大人になってもう一度読むと「ああ、こういう話だったっけ」と懐かしく思うとともに「今だからわかる気持ち、今だから思う感想」っていうのがあるわけです。


昔の名作が文庫化されて再ヒットする理由が、よ〜くわかります。
病室内に「マンガブーム」が到来してからは、とどまるところを知らず。6人中3人が猫を飼っていたので、猫マンガが輸入されました。ここ数年、男性マンガ週刊誌でブレイク中の「チーズスイートホーム」はカワイイし、同じ作者の別作品「ふくふくふにゃーん(こなみ かなた)」もふんわり楽しい作品でした。

思えば、長編マンガを一気読みする時間って、なかなか取れないですよね。入院期間は、一気読みができるビッグチャンスでした。

そこで、友人が子宮筋腫の手術で入院することになった折り、マンガを差し入れてみることにしました。我が家で今人気がある「のだめカンタービレ二ノ宮知子)」を持参したところ、これが大ヒット。お見舞いに来た息子さんにまで大ウケ。

プレゼントする、というより「自分の蔵書を一時的に貸してあげる」というのでちょうど良いのです。長編作品は所有するのに場所が必要なので。

返すのが前提だから、後に荷物も残らない。引き取りに行けない場合は、着払いの伝票を添えておきましょう。たいていの病院では、売店部門で宅配便の集荷をしてくれるので、退院時に発送してもらえばいいのです。

ただし注意点がひとつ。テレビもマンガもそうなのですが、本気で笑う時は、ものすごく腹筋を使います。うっかり笑うと、切ってつながった傷口が、すごーく痛いんです。くしゃみも危険なんですが。…そういう意味では、作品選びには慎重に。

私の場合、小説やエッセイといった「文字だけの本」に取り組めるようになったのは、手術から10日過ぎごろから。話題の海外小説上下巻が面白くて、夢中になって、物語の世界に没頭していました。入院が長くなる場合には、じっくり読める小説も候補です。

気分転換のためにパラパラするなら、雑誌もグッド。普段段読まないジャンルのものに触れるのは面白い体験です。もちろん、雑誌の場合は「頂く」のが前提。読み終わったら処分していいよ、というのが一番気楽です。

というわけで、私のお薦めする、意外なお見舞い品はふたつ。
「貸与=長編マンガ」と「贈与=写真ふんだんおしゃれ雑誌」なのでした。