山頂360度視野の民宿

一夜明けて渓頭(シートゥ)の朝。窓から見える景色は真っ白なもやに包まれ、しょぼしょぼと雨が降っている。

ああ、天気予報はどうやら1日〜2日ほど後にずれ込んでいるらしい。雨が終わって晴れるタイミングだとふんでバイクを借りたのだが。
まあ天気だけは私の力ではどうにもならない。山間部に雨が多いのも当然といえば当然。
救いなのは次の宿までの距離が短いこと。来た道を12kmほど戻ったところに目的地「鹿谷(ルーグ)」はある。

今度は通過しないで確実に到着したい、と願うあまり、へっぴり腰で人に道を聞きながら走る。それにしてもこのバイク、トリップメーターだけでなく、スピードメーターも動かないんですが。途中、エンジンも息切れしているようで心配。青くなって加油站(ガソリンスタンド)に行き、満タンにガソリンをチャージ。道に迷った上にガス欠なんて絶対に避けたい!ついでに道をたずねると「鹿鼎荘(ルーディンヅォン)」は有名だった。すぐに道がわかってホッと一息。交差点を曲がって山道を登り始めると、カーブごとに看板が出ている。ふもとから3km登った山のてっぺんに、その民宿はある。

真っ白にもやがかかっていて、景色は全く見えないのだけれど、ここがとってもいい場所だっていうのはわかる。ああ、今度は晴れている時に来たいな〜。
天気が悪いので、周辺観光はあきらめた。雨が降ったら停滞、バイクの旅はそれでいい。
おかげで、部屋でのんびりしながらこうして文字を書けるんだしね。天気のおかげで忙しさにブレーキがかかるのは、いいことかも。
→角部屋の205号室


夜19時。部屋の電話が鳴って「食事だから1階のレストランに来てください」とのこと。一人用の定食(料理4〜5品、ご飯とスープで200元)を頼むと、「今、もう一人日本人のお客さんが来ているから一緒に食べれば」と言われる。もう一人とは、お茶の魅力に開眼して、中国本土、台湾各地のお茶の産地を歩く男、ミスター大阪(もちろん愛称。大阪から来ているので、宿の人たちはオオサカさん、と呼んでいるのだ)。さっそく、お茶好き同士で話が弾む。
他のお客さんは、60代後半の人々の同窓会。その中の数人は日本語ができるというので、これまた話が弾む。最後には日本の歌のカラオケで大盛り上がり。

食事が一段落したところで、宿のオーナーであり陶芸家の、劉祟礼さんが、おもむろに茶碗をささげ持ってきてくれた。日本の茶道に使うようなお茶碗だ。中にはたっぷりと茶色の茶葉が入っている。
「これは凍頂烏龍茶の葉で作った紅茶(ホンチャー)」だという。ええ!全発酵ですか。それは珍しい。これまで飲んだことのある台湾の紅茶は、シャープでインパクトが強く、私には強すぎると思っていた。だけどこの凍頂紅茶は、もっとやさしい味だ。東方美人のようにまろやかでありながら、しっかりとした味わい。味と香りの方向性としては、インド、ダージリンのマカイバリ茶園に近い。
美味しい。実に美味しい、とミスター大阪と大感激。

すると、劉さんが「これからホタルを見に行こう」という。もちろん大喜びで出発。「今日は雨が降ったからホタルは少ない」という話だったけれど、草むらに遠く近く点滅するホタルの光は、とってもキレイ。なんと、このホタル鑑賞ドライブは宿泊客へのサービス。 素敵な宿だわ〜。
さらに、帰り道には、製茶工場の見学にも連れて行ってくれた。お茶ファンの二人は大満足。ミスター大阪は、この土地に5日間滞在しお茶畑を見て茶摘みを見学するという。案内役は、日本語の話せるお茶屋「揚津茶業」のお嬢さん。いいなあ。
私はバイクの返却と屏東移動があるので、今回は挨拶だけで我慢。でもこの宿はとっても気に入った。また来たい。今度は晴れている時に。
ちなみに、ホタルの見られる季節は4〜5月。新茶の茶摘みも4月上旬(清明節の頃)から5月初旬頃。今はできたての春茶を味わうことができ、ホタルも見られるといういいシーズンだったのだ。雨さえ降らなければサイコーなのに。というか、山の天気は読めないので、滞在日数を長めに見積もるのが正解かな。次回も絶対、平日の空いている時に来よう!
バイクに乗れる人には、集集駅からレンタルバイクでくるのがおすすめ。足があれば近隣の観光にとっても便利。

鹿鼎荘(ルーディンヅォン)
南投県鹿谷郷彰雅村凍頂巷10-18号
049-275-0100
http:www.ludin.com.tw
オーナーの劉 祟礼さんのお父さん・お母さんは70代。小学校時代に日本語教育を受けていて、日本語が話せる。
台北ナビの記事はこちら

揚津茶業(ヤンシンチャーイェ)
南投県竹山鎮延平里東郷路6-123号
049-2652650
蔡 白梅(サイ パイメイ)小姐は日本語ペラペラ!