成田で気分は心停止

いよいよ出国日。午前中は温泉に行き、昼過ぎに車で成田へむけて出発した、私とダーリン。
乗る予定の飛行機JAL657(成田−高雄)便の出発は18時。今、日本に滞在していて里帰りする香先生(南台湾でお世話になったホストファミリー)と同じ飛行機だ。
携帯電話で連絡を取り合い、15時にカウンターの前あたりで会おう、と話す。
ところが私たちが成田の駐車場から送迎バスで移動する間に香先生は一足先にチェックインをすませていた。「じゃあ、搭乗ゲートで会おうね」と電話しながら、荷物預けのカウンターへ向かう。しかし。ずらり並んだ自動チェックイン機にパスポートをかざすと、エラーメッセージが。
人のいる窓口に通され、「少々お待ちください」と待たされることしばし。係員の女性の表情が暗い。
「大変申し上げにくいのですが…」
んん?
今回はパスポートも忘れなかったし、搭乗日も間違えてない。台湾に渡ってからレンタカーに乗れるよう、免許の翻訳書だって手に入れた。準備は万端のはずよ〜っ。
「台湾に入国する場合、パスポートの残存期間が3ヶ月必要なんですね」
ええ。そういえば私も9月の欧州旅行で残存期間6ヶ月を切っていたので、10年有効パスポートを更新したばかり。それにダーリンのパスポートだって、つい2年ほど前に新しくしたばかり……。ところがそこに盲点が!
ダーリンは、自宅に空き巣が入ってパスポートを盗まれる、という目に遭っていて、そのときに「再発行」しているのだ。再発行とは、前回取得したのと同じ有効期限。つまり、パスポートの本体が新しく見えても、この有効期間は2009年3月11日までなのだった。

「残念ですが、残存期間が17日間足りません。飛行機そのものには乗れますが、台湾で入国できないおそれがあります。それがわかっている以上、このご旅行そのものをおすすめする訳には参りません」

ざざ〜っ、と血の気が引いていくのがわかる。
もう、立っているのがやっと。
脳の血管を巡っているはずの血液が、すべて足下の方へ、滝のように流れ落ちていく。何も考えられない。
ショックのあまり、心臓が止まりそうな感覚。

「気を落とさないでください。お客様の今回のチケットはマイルの特典航空券ですから、別の日程でお使いになることができます。最初に予約した時点から1年間有効ですので」
ああ、その情報がせめてもの救い。
しかし、一緒の飛行機に乗れない、その後の台湾での予定はすべてキャンセルせねばならないことを、香先生に伝えなくてはならない。そして、携帯に電話をしても彼女が出ない!
半べそになって、さっきのカウンターに戻り、例の係員の女性に事情を説明。搭乗ゲートにいる香先生に、手書きのメッセージを届けてもらうことにする。

とっても楽しみにしていたのだが。今回の年末年始旅行。
まさか、飛行機に乗れないとは。
旅が始められずに終わることになるとは。
年内最大の事件。
そして私の旅行人生でも、かなり大きな失敗なのである。
またしても、でっかい伝説が生まれてしまった。
がっくり。