第10回 女性にお勧め温泉湯治



2005年6月。3週間の入院の後、私は「温泉湯治」を計画していました。

10年前の入院は9日間でしたが、大事をとって実家で療養すること1ヶ月。しかし、夏暑く冬寒い実家での療養は、お世辞にも快適とは言えず。今度は別の方法を考えようと思っていたのです。

最初から、退院後すぐに自宅に戻ることは考えていませんでした。元気な頃と同じペースでは、掃除に買い物、車の運転、料理や洗濯をこなすことができない、という自覚があったから。しかも、体力が無くて疲れやすいでしょうから、寝ている時間が長いことが予想されます。

共に暮らすパートナーにとって、その「ダラダラ生活」は見るに耐えないものだ、というのが心配でした。
「一日家にいるのに、仕事(家事)できないってどういうこと?」 それは、外で働き疲れて帰ってくる人に共通する本音ではないでしょうか。私の彼は「家にいなければ摩擦がない」と、私に温泉湯治を推薦してくれたのでした。

「東北にはさ、1泊2000円ぐらいで泊まれる温泉宿があるんだよ。長く滞在して毎日温泉にはいって、身体を治すっていう湯治場が。そういうところに行って、のんびり傷を治してきたらいいじゃない」


なるほどこれは一石二鳥。自分の面倒だけを見ればいいなら、マイペースでダラダラ生活でも、全く問題ない!
入院が決まってからの私は、退院後の湯治先探しに熱中。インターネットや温泉雑誌、東北出身の友人から情報を集め、パンフレットなどを集めて検討しました。

選んだのは、「岩手・花巻温泉」の「大沢温泉 自炊部」。

1泊あたり約2000円、3週間滞在しましたが部屋代は5万円ちょっと。運動する元気はなくても、一日数回、温泉に入ることならできます。
しかも、人の世話をしなくてよい解放感。ああ、これ以上の療養はありません。徐々に体力が回復していくのがわかるのも、ありがたいことでした。

家庭において女性は、期待されること・要求されることが多いですよね。料理、洗濯、掃除に買い物。「家の中で快適に過ごす要素のすべてを監督する」のが主婦の責任。
主婦にとって家とは、「くつろげる空間を維持する義務をになった職場」ではないでしょうか。

だったら、入院するほど体調が悪いときは、思い切って「家庭という職場」もお休みして、復帰に備えてはどうでしょう。会社でお勤めしている人にも、私はできるだけ「長い休暇の申請」をお奨めしたいのです。

いくら退院できても、その後、前と同じ元気なペースですぐに復帰するのはムリな話。だとしたら、温泉湯治という期間をプラスして職場(会社と家庭両方)から離れて、完治を目指す方が早道だと、私は思うのです。

人目につくところで苦労を続けるより、転地療養で人目を避けてこっそり復調する。先人の知恵を拝借して「温泉湯治でのんびり静養」を、ぜひお奨めしたいと思います。